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桐(きり)〜ゴマノハグサ科キリ属の落葉高木。5月頃、筒状の薄紫の花が咲く。天皇家の紋章には、菊とともに桐紋が使われる。京都市の西にある愛宕山麓で多く見られ、上賀茂神社にも大きな桐の木がある。 「桐壺」ー第1帖 源氏物語は「桐壺の巻」から始まります。 いつの御代のことか……、桐壺帝のご寵愛を一身に受ける姫君(更衣)がおりました。他の女御達の妬みの中、光るように美しい皇子(源氏の君)が産まれますが、やがて病気がちになられ、この皇子が3歳の時、亡くなってしまいます。帝の悲しみは深く… |
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。 藤(ふじ)〜山野に自生するマメ科のつる性落葉樹。4月末頃、紫色の美しい花房が下がる。平安時代には松に絡みつく藤が情趣あるものとされた。京都御所の飛香舎(藤壷)では、毎年5月頃見事な藤が花房をつける。 |
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+ . 常夏(とこなつ)〜唐撫子(なでしこ)の古名。ナデシコ科の多年草。 |
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。 。 夕顔(ゆうがお)〜ウリ科のつる性草本。長球形の果実がかんぴょうの原料となる。花は純白で、夏の夕方咲き、朝にはしおれる。 |
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。 紫草(むらさき)〜ムラサキ科の多年草。根が太く紫色で、6〜7月頃小さな白い花をつける。根は紫根と呼ばれ、昔から紫染めの原料として用いられた。また解熱・解毒に効果があり漢方薬でもある。 |
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. 紅花(べにばな)〜末摘花とは紅花の別名。染料にするために、茎の末に咲く花を順次摘み取る事からそう呼ばれる。 |
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. 紅梅(こうばい)〜バラ科の落葉高木。早春に葉より早く若枝に花を咲かせます。花後に芳香のある果実を付けます。 |
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。 紅葉(もみじ・いろはもみじ)〜カエデ科カエデ属の落葉高木。京都の高雄山に多いことから高雄紅葉とも呼ばれす。秋の色付いた紅葉も見事です。 |
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。.。 菊(きく)〜キク科キク属の多年草。日本で自生する野菊は20種ほど。 |
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.。 桜(さくら)〜バラ科の落葉高木。4月頃に薄いピンクの花を咲かします。秋に葉が紅葉するのも見事です。
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。. 葵・双葉葵(あおい・ふたばあおい)〜ウマノスズクサ科フタバアオイ属の多年草。茎は地上を這い、先にハート型の葉をつけます。3〜5月頃紫褐色の花を咲かせます。京都の賀茂神社の葵祭に、行列の人々が髪飾りに用いるので「賀茂葵」とも呼ばれます。 |
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。 榊(さかき・ひさかき)〜ツバキ科ヒサカキ属の常緑小高木。3月頃白い5弁花をつけます。仏壇やお墓に供える花木として用います。 |
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. 松・五葉松(ごようまつ)〜マツ科マツ属の常緑高木。山地に生え、葉は針形で5個が束生します。古くから庭木や盆栽にされます。 |
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. 橘(たちばな)〜ミカン科ミカン類の常緑低木。初夏に五弁の白い花を咲かせる。 |
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. 朝顔(あさがお)〜ヒルガオ科の一年生つる性植物。5〜7月早朝ラッパ形の花を咲かせる。花色は原種は薄青色。万葉集で「朝顔」は桔梗を指すが、「源氏物語」では「朝顔の……這ひまつはれて」とあり、今の朝顔と同じか。 |
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. 蓮(はす)〜ハス科ハス属の水生多年草。7月頃池や沼に白や薄紅色の花を咲かせます。経典に神が最初に蓮を咲かせたとあり、仏像は蓮の台座に在す。 |
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. 山吹(やまぶき)バラ科ヤマブキ属の落葉低木。高さは2mほどで、4〜5月頃、鮮やかな黄色い花をさかせます。 |
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. 梅(うめ)〜バラ科サクラ属の落葉小高木。中国原産で奈良時代に日本に伝わったと言われる。1〜3月頃、前年枝の葉腋に香しい花をさかせます。 |
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。 萩(はぎ)〜マメ科ハギ属の落葉低木。秋の七草のひとつ。7〜10月頃白や赤紫色の花を咲かせます。 |
「源氏物語」に登場する植物は、草本類が62,木竹類が61で合計123といわれています。春の花木として梅、桜、藤、山吹、柳など。夏の花木は、橘、サツキ、楓(若葉)柏、朝顔、夕顔、せきちく、撫子、菖蒲、蓮など。秋の花木は、萩、楓、紅葉、菊、藤袴、女郎花、桔梗、竜胆、吾亦紅、ススキなど。冬の花木として、木楢、松など。
それぞれの花が、四季を背景に、物語の演出に大きな効果をもたらしています。
その花の持つ特徴などから、女性に例えられることも多くみられます。「野分ー28帖」では、紫上は樺桜のように華やかに美しい姿と表され、玉鬘は八重山吹に霞がかかり、夕焼けの残照に映えるようだと表現されています。また「夕顔ー第4帖」や「末摘花ー第6帖」などは、その巻名にまでなっています。
花でその女性の「縁」を表すこともあります。ムラサキ(紫草)の根から紫色の染料が得られることから、北山で見つけた少女を藤壷の「縁続き=姪」として、若紫と呼び、源氏の君は引き取ることになります。また玉鬘はユウガオの鬘ですから、夕顔の姫君の娘として登場します。
六条院に秋、御方々は引っ越しますが、秋好む中宮は、春の町に住む紫上に、秋の草花や紅葉を取り混ぜて贈り、秋の美しさを主張します。紫上は、春になり華やかな花の宴でこれに応えます。古来から引き継がれてきた春秋の優劣の争いがここに語られています。このように、品種改良や外来種などが普及していない当時の、花木の種類を知ることができる事を考えても、「源氏物語」は、日本の花の歴史を知る重要な文献のひとつでもあるのです。
参考資料:四季花めぐり11(小学館)/ 他
写真提供: shibe / 他