やさしい現代語訳 「源氏物語」
 

「桐壺」
(きりつぼ)

第1帖

何時の御代のことでしょう。
宮中には、帝のご寵愛を一身に受ける姫(更衣)がおりました。
美しい姫はやがて皇子(源氏の君)を産みますが、皇子3歳の頃亡くなります。
帝は悲しみの中、更衣によく似た藤壷を入内させ……

「夕顔」
(ゆうがお)
第4帖 
六条御息所の御邸にお通いの途中、夕顔の花の咲く家がありました。
源氏の君が「その白い花は?」と尋ねますと、扇に夕顔の花をのせて……
やがて夕顔の姫君と愛しあいますが、御息所の生霊に憑かれ、はかなく命を落とします。

「若紫」
(わかむらさき
第5帖
熱病を病んだ源氏の君は、祈祷のため北山の寺にでかけます。
そこで愛する藤壷(継母)によく似た愛らしい少女に出逢い、二条院に迎えます。
愛しい藤壷との初めての逢瀬に、藤壷はご懐妊をなさいまして……

「末摘花」 
(つえつむはな)
第6帖
白梅の薫る夜、常陸宮の姫君にお逢いになりました。
無口な姫に苛立ち、せめて美しいならと、雪明かりにお顔をご覧になりますと、
鼻は象のように紅く垂れ下がり……

 「紅葉賀」
(もみじのが)
第7帖
朱雀院の行幸が催され、紅葉の下で舞う源氏の君のお姿は大層美しいものでした。
2月に入り、藤壷は皇子を出産なさいましたが、桐壺帝は源氏によく似たこの皇子を大層可愛がりなさいますので、藤壷は罪の重さに苦しみ…

 
「花宴」
(はなのえん)
第8帖
桜宴の夜、ほろ酔い気分の源氏の君が弘徽殿の辺りを歩いていますと、「朧月夜に……」と詠ってくる美しい姫がおりました。源氏の君は思わず姫の袂を捕らえて……
2人は愛し合うことになりますが……

「葵」
(あおい)
第9帖
 
 賀茂の祭、葵上一行は御輿の所争いとなりました。所争いに破れた御息所は生霊となって葵上に取り憑いて……葵上は御子を出産後に亡くなります。 
悲しみの中、源氏の君は藤壷に似て愛らしい若紫と、遂に新枕を交わします。

「賢木」
(さかき)
第10帖
桐壺院がご崩御なさいました。藤壷中宮は、故院の一周忌法会の後、黒髪を切り出家なさいました。
源氏の君は朧月夜と逢瀬を重ねておりました。
ある雨風の激しい夜、2人は右大臣に見付かり……

 「花散里」
(はなちるさと)
第11帖
五月雨の晴れ間に、麗景殿の女御の御邸を訪れました。
橘の花の香る中、女御としみじみ懐かしい昔話などをして心慰めます。
そして、妹の花散里と愛を交わします。

「須磨」
(す ま)
第12帖
 
朧月夜との密会が発覚して、源氏の君は官位を剥奪され、自ら須磨へ退く決心をなさいました。
須磨には訪れる人もなく、侘びしさは募るばかりでした。
ある風雨の暁、夢に怪しい物影が現れ……

「明石」
(あかし)
第13帖 
住吉のお告げどおり、源氏の君は明石の浦に着きました。
都では、遂に源氏の君をお許しになる宣旨が下りました。
その頃源氏の君は入道の娘と契り、ご懐妊の様子に、明石を離れることを大層嘆かれ……

「澪標」
(みをつくし)
第14帖 
京に戻られた源氏の君は、内大臣になられました。
朱雀帝が譲位なさいまして、冷泉帝(藤壷との不義の御子)が即位なさいました。
明石には女の御子が生まれ、京に迎えようと……

「蓬生」 
(よもぎう)
第15帖
京に戻った源氏の君は、久し振りに常陸宮の御邸を訪れます。
蓬の深く生い茂り朽ちた邸で、ただ待ち続けていた末摘花を大層お気の毒にお思いになって……
要約「帚木・空蝉」 
「関屋」
(せきや)
第16帖

源氏の君は石山詣でに出かける途中、逢坂の関で、任地から帰る途中の空蝉の一行とであった。空蝉の弟を介して、手紙のやりとりをし昔を懐かしむが、やがて空蝉の夫は病死し、空蝉は尼となってしまいます。

「絵合」
(えあわせ)
第17帖
 
冷泉帝は大層絵がお好きで、絵の上手な梅壺の女御をご寵愛なさいました。
ある日、冷泉帝の御前で「絵合」が催されました。絵の見事さを競い合いますが、なかなか勝負がつきません。最後に源氏の君が須磨で描かれた絵が出されまして、遂に梅壺方が勝ちました

「松風」 
(まつかぜ)
第18帖
二条院の東院が完成しましたのに、明石の君はなかなか京に上ってきません。
ようやく大堰の御邸に移られまして、久し振りの再会を果たされました。
源氏の君は愛らしくなられた姫君を手元に引き取りたいと……

「薄雲」
(うすぐも)
第19帖
 
明石の姫君を二条院に迎えた源氏の君は、紫上と大層幸せな日々を過ごされました。
その頃、太政大臣に次いで、藤壷入道の宮も儚く亡くなられました。
源氏の君は大層悲しまれ……

「朝顔」
(あさがお)
第20帖
父宮を亡くし、斎宮を退下された朝顔の宮に、今も源氏の君は想いを寄せておられます。宮邸を訪れては、その想いを訴えるのですが「その年齢に相応しくないと……断ります
源氏は過去の女性について紫上に語りますと、その夜、夢に藤壺が現れ…

「少女」 
(おとめ)
第21帖
夕霧は元服の儀を迎えました。
大宮の御邸で共に育った雲居の雁(内大臣の娘)に想いを寄せながらも、二人は引き離され……
六条京極の辺りに見事な六条院が完成しました。

「玉鬘」
(たまかずら)
第22帖 
亡き夕顔の娘(玉鬘)は幼くして、筑紫に下校しておりました。
乳母の夫が亡くなり、ようやく京に戻りましたが、日々がすぎていきました。
「神仏が姫君を幸せに導く」と初瀬の観音にお参りにいきましたが、そこで、やはりお詣りにきていた右近の一行に出逢い・・・・・

「初音」
(はつね)
第23帖
 
六条院で源氏の君は、紫の上と仲むつまじく、新年をむかえられました。
権勢に満ち溢れ、華やかな日々をしみじみと感じておられました。
そして明石の姫君、花散里、玉鬘、明石の上、さらに末摘花、空蝉などとお逢いになり……

「胡蝶」
(こちょう)
第24帖 
春の御殿の池で、舟楽が催され、鳥と蝶に扮した女童が美しく舞いました。
西の対の玉鬘には、多くの公達が恋心を抱くようになりましたが、
源氏の君ご自身も、すっかり心を奪われてしまわれました。
玉鬘は源氏の君の御心を疎ましくお思いになり……
 
「 蛍 」
(ほたる)
第25帖
玉鬘には多くの公達が恋い焦がれ、兵部卿の宮(光源氏の弟)も、一途に想いを寄せておられました。夕闇が過ぎて、宮がお渡りになりました。源氏の君が薄絹に包んでおいた蛍を放ちますと、ほのかな光の中、玉鬘のお姿は、大層美しく、宮の心に深く刻まれました。
 
「常夏」
(とこなつ)
第26帖
源氏の君は御琴を教えることを口実に、うつくしい常夏の花咲く西に対に繁く通われ、玉鬘への想いを募らせておられました。
一方、内大臣は、近江の君(娘)を引き取りますが、その早口や振る舞いが好きになれず、手を焼いておいでになりました。
 
「篝火」
(かがりび)
第27帖

秋の夜
御前の篝火を灯して、源氏の君は、琴を枕にして、玉鬘と添い寝をしておられました。 篝火のほのかな光の中、玉鬘の愛らしいご様子に……

「野分」
(のわき)
第28帖 
 秋になり野分が吹き荒れ、夕霧が春の御殿にお見舞いに上がりますと、
廂の御座所に座っておられる女性がおりました。青その方は気高く清らかで、ぱっと美しく、あたかも春の曙の霧の間から樺桜が咲き乱れているようです。長い年月、このように紫上にお逢いすることがなかったと……
 
「行幸」
(みゆき)
第29帖
12月、大原野へ行幸があり、玉鬘は行列の中に、父大臣の姿を見ます。
冷泉院は源氏の君に似て美しく、玉鬘に宮仕えを進める源氏の君は、この折りにこそ、内大臣に全てを打ち明けようと大宮を訪ねます。
翌年、玉鬘の御裳着で、内大臣な腰結役を勤められ、涙を流されました。

「藤袴」
(ふじばかま)
第30帖 
大宮が亡くなられて、薄鈍色の喪服をお召しになった優雅なお姿で、夕霧が玉鬘のところをおとずれました。姉弟でないと分かった今、平静で居られなくなり、御簾の下から、藤袴の花を差し入れ、恋い心を打ち明けなさいました。
 
「真木柱」
(まきばしら)
第31帖
女房の手引きで、髭黒大将が玉鬘を自分のものにしてしまいました。
「あまりにも辛い運命……」と嘆き悲しむ玉鬘の美しい姿に、源氏の君は、ご自分の熱い想いを冷ます事ができません。

真木柱の姫は父君との別れに悲しみ、手紙を柱の割れ目に差し込んで……

「梅が枝」
(うめがえ)
第32帖 
明石の姫君の御裳着の日が近づき、そのご準備に、源氏の君のお心遣いは大変なものでした。御前の紅梅の花盛りの頃、兵部卿宮と薫物合わせをなさいました。
御方々の調合なさいました肴はそれぞれに素晴らしく……
 
「藤裏葉」
(ふじのうらば)
第33帖
藤の咲く頃、遂に大大臣のお許しがでて、夕霧は雲井の雁と結婚されました。
亡き大宮がお住まいだった三条院に、お二人はお住まいになりました。
明石の姫君が入内し、母・明石上が後見として宮中にお上がりになりました。
源氏の君は準太政大臣の位を授かりました。(第一部終)
 
「若菜・上」
(わかな・じょう)
第34帖
朱雀院は女三宮を六条院(源氏)に嫁がせる事を決め、その春降嫁されました。
姫宮は最高の待遇で迎えられ、紫上にはお辛い日々でございました。
六条院で蹴鞠を催した日、柏木は女三宮(源氏の妻)の姿を御簾の蔭に見て、その美しさに心奪われ……
 
「若菜・下」
(わかな・げ)
第35帖
紫上の心労が重なり、ついには、病みつかれました。源氏の君が付き添って看病にあたり、女三宮には寂しい日がつづきました。そんな夜、柏木が忍び込み、女三宮との想いを遂げ、宮はご懐妊なさいます。
源氏は柏木の御文からこの事実を知り、昔の藤壺との不義を思い・・・

「柏木」
(かしわぎ)
第36帖
 
柏木は良心の呵責から病みつき、ご容態はどんどん悪くなります。
そんな中、女三宮は、男親王をご出産なさいました。源氏の君は「疑わしいことがなければ……」と、疎ましくお思いでした。女三宮は出家し、それを知った柏木は儚く亡くなります。

「横笛」
(よこぶえ)
第37帖
 
夕霧は、柏木の遺言とおり、落葉宮(柏木の妻)をお見舞いに訪れます。
母御息所は、帰り際、柏木が大切にしていた笛を譲り渡しますが、その夜、夢に柏木が現れて、「その笛は相応しい人に譲りたい……」と申します。

「鈴虫」
(すずむし)
第38帖
出家をした女三宮の持佛供養が盛大に行われました。
月の美しい夜、源氏の君は、女三宮を訪ね、庭の鈴虫の声を聞きながら、しみじみ語り合います。
源氏は秋好中宮を訪ね、母・御息所の冥福を祈り 法華御八講を催します
 
「夕霧」
(ゆうぎり)
第39帖
 亡き柏木の遺志に違わぬように、夕霧は落葉宮の後見をと近づきますが、宮は心を許しません。一条の御息所は物の怪に憑かれ、宮を連れて、小野の山荘に移られますが、
やがて亡くなります。
 
「御法」
(みのり)
第40帖
紫上は余命すくない……とお感じになり、出家を望まれますが源氏の君はお許しになりません。ようやく秋になり、風が冷たく吹く夕暮れ、萩の花をご覧になりながら、やがて、本当に消えゆく露のように、はかなく亡くなられます。

「幻」
(まぼろし)
第41帖 
麗らかな春の光をご覧になるにつけても、源氏の君はますます涙にくれ、思い沈んでおられました。遂に出家を決心なさったのか、大切に残して置かれたお手紙を、全て焼かせなさいました。 
悲しみを癒すため、幼い匂宮を相手に心慰めなさいました。(第2部終)
 
「匂宮」
(におうのみや)
第42帖
源氏の君が亡くなられた後、あの輝きを継ぐのは、匂宮と薫のお二人であると、世間の評判でした。陽気で軽薄は匂宮に対し、薫は誠実で落ち着いた性格でしたが、ご自分の出生について苦悩しておいでになりました。 二人は仲の良い、競争心を持った若宮、昔の源氏と頭中将のようでした。
 
「紅梅」
(こうばい)
第43帖
太政大臣の娘真木柱)は、故蛍兵部卿との独り娘を連れて、按察大納言と再婚なさいました。匂宮はこの美しい姫に感心を持ち、殿上童している弟を通じて、御文などをお送りになりましたが……

「竹河」
(たけかわ)
第44帖 
髭黒大将が亡くなり、妻・玉鬘と二人の美しい娘が残りました。
薫は姉の大君に想いを寄せ、度々玉鬘のところを訪ねておりました。
しかし、結局、大君は冷泉院に嫁ぎ、女の子が生まれますが・・・
 
「橋姫」
(はしひめ)
第45帖
八宮(源氏の弟)は不遇に遭い、二人の娘と宇治の山荘に住んでいました。
晩秋、薫が宇治を訪れ、月光の下娘達が琴を弾いている姿を垣間見ます。
その美しさにすっかり心奪われてしまいますが、心許してはくれません。

薫は辨の尼から出生の秘密を明かされます
 
「椎本」
(しいがもと)
第46帖
度々薫は宇治の山荘を訪れ、八宮から教典の教えを受けます。八宮は「亡き後、二人の娘の後見として世話してほしい」と遺言を言い置かれます。
やがて八宮は亡くなり、薫は大君に想いを訴えますが・・・・・

「総角」
(あげまき)
第47帖 
薫は姫君の寝所に忍び込むが、大君は気配を察して、床を抜け出し……
匂宮を山里に案内し、宮は愛らしい中君と結ばれますが、京から通うには余りにも遠く……
薫の手篤い看病も虚しく、大君は亡くなります。
宇治に独り残された中君は……

「早蕨」
(さわらび)
第48帖
 
父の八宮が亡くなり、姉の大君も失った中君は、悲しみの日を過ごしていました。薫の手引きで、匂宮と結ばれた中君は、やがて京に引っ越すことになり、薫は、愛しい大君の妹・中君を匂宮に譲ったことを、後悔していた。宇治の山荘には辨の君が残ることになり、別れの歌を交わし・・・

「宿木」
(やどりぎ)
第49帖
右大臣の娘・六君と匂宮の婚儀が整い、中君にはご懐妊の様子がみられ・・・。
「やはり匂宮は浮気な方…やはり宇治へ帰ろう」中君は悲しく思い立ちました。
婚儀の日、匂宮は愛しい中君を見捨てて、出かける気になれず、ご一緒に十六夜の月を眺めて……

「東屋」 
(あずまや)
第50帖
常陸の介の後妻には、大層美しい姫がいました。桐壺院の八の宮が、娘と認めてくださらなかったため、のない娘として大切に育てておりました。
薰大将はこの姫を、亡き大君の形代として宇治に隠して世話をしていましたが、匂宮がこれを知り、宇治を訪れて……

「浮舟」
(うきふね)
第51帖
薰大将は、姫(浮舟)をいずれ京に迎えるとして、長い月日が経ちました。匂宮はこっそり宇治を訪れ、逢瀬を重ね,姫はすっかり匂宮に心惹かれてしまいました。 薰大将が、姫を京に迎える日をお決めになると、浮舟は大変お悩みになり、遺書を残して……

「蜻蛉」
(かげろう)
第52帖
浮舟は 荒々しい宇治川の流れに身を投げてしまいます。薰大将と匂宮の悲しみは大層深いものでした。
けれども暫くして、匂宮は 心慰められるか…と、新たに美しい姫君を捜して歩き回りました。一方、薰は、残された人々を見捨てることなく……
       

 「手習」
(てならい)
第53帖
横川の僧都が、宇治の院で、川岸に倒れ衰弱している浮舟を助けました。
妹尼のお世話の甲斐あって、漸く回復してきますが、浮舟は強く出家を望み、
妹尼達が初瀬観音に参詣している間に、僧都に頼んで出家をしてしまいます。

このことが、やがて薰の耳に入り……
 
「夢浮橋」
(ゆめのうきはし)
第54帖・最終章
薰大将は、浮舟への想いを伝えようと、小君(浮舟の弟)に手紙を託し、尼庵に向かわせます。
しかし浮舟は、全てへの愛を断ちきって・・・・・
(完)
      

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